ボクがまず釣りにのめり込み、さらには海に潜るようになってしまった元凶(笑い)はクロダイである。 中学・高校時代に三浦半島にちょくちょく出かけ、狙っていたターゲットがクロダイ。それはボクの隣で釣っていた見知らぬおじさんが釣り上げた35cmほどのいぶし銀の魚体をみてしまってからだ。それからはひたすらそのいぶし銀を狙って釣行を重ねたが、なかなか釣れる相手ではなかった。 怒涛の10連敗なぞ当たり前。 かろうじて釣ったチンチンサイズ(20cmほど)がボクにとっては貴重な存在だった。 しかし、なぜ、こんなに釣れないのか? 釣り場で何度も魚体を見ているからいるにはいるのだ。 ということは、ボクの狙っている場所が悪いのか、釣り方が悪いのか…。これは海に潜ってクロダイが何をしているのか調べてみよう。そんな誰もが思いつくストレートな発想が原点だった。 サカナの生態に詳しくなれば、釣りもうまくなるはずと進んだ水産大学で潜水部に入り、スクーバ潜水(ボンベを背負って潜る)を覚え、海に潜った。初めてスクーバで潜った外房の小湊では、クロダイは海藻の間を自在に泳ぎ抜け、しかも驚くほど数多くいたのだった。 |
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潜ってみている限り、クロダイは貪欲である。特に砂泥の海底では、海底の砂泥を巻き上げて濁らすだけで、どこからともなくクロダイは集まってくる。 10年近く前に長崎県五島列島に行ったときのことだ。爆釣の情報が入っていたにもかかわらず、この日の釣果は出だし不調。ボクは釣りとクロダイの水中撮影をかねていて、潜水道具一式を持参していた。 もしかして、ボウズになるかもしれないけど、逆に大爆釣になるかもしれない。 そんなギャンブルの話を同行した釣り仲間にして潜ってみた。 このときはまったくクロダイの姿が見られなかった。 「よしっ!海底の砂泥を巻き上げて思いっきり濁らせてみよう。やつらがこの近くにいるなら寄ってくるはずだ。だけどやりすぎたら逃げていなくなっちゃうかもしれないけど…」。 フィン(足ヒレ)で海底を思いっきりあおり、ひたすら濁らせてみた。あたりの透明度はいきなり落ちて茶色く濁った海となった。ボクは海から上がった。それからしばらくすると5分もしないうちに仲間が一匹目をゲット。なんと58cmもあった。それからが入れ喰いとなり、50〜58cmが全部で20尾あまり。近くの磯に上がったグループは型を見た程度だったから、いかにこの磯が釣れたかがおわかりいただけるだろう。 また、この日は面白い事件が起きた。ヒットした57cmの超良型をひたすら追いかけ、ハリがかりしたクロダイがどこへどうやって逃げていくかを試してみたのだ。ボクは水中ビデオ用ライトをコウコウとつけ、彼を全力で泳いで追い回した。 するとどうだろう。隣の磯に到達してしまっていたのだが、あろうことに、そのクロダイはそこに撒かれたコマセをぱくぱくと喰い始めたのである。口にはハリが刺さり、おまけに糸も引っ張っている。さらにはライトをコウコウと焚いて、ボコボコと怪しい音をたてて追いかけてくるトドのような奴(ボクのこと)がいての話である。 このとき、ボクは気持ちの中でふっきれた。 |
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チンチンやカイズサイズでは、小さな群れで行動することもあるが、クロダイは大型になればなるほど単独で行動する。 また、あるとき一日中潜って定点観察をしたことがある。朝から潜り続け、陸に上がったのはボンベが空になって交換するわずかな時間と昼飯がわりのゼリー状の栄養食品を吸った時間だけである。そのときにわかったのは、クロダイは自分のテリトリー的なエリアを持っていて、そこを一日に2〜3度ほど回遊する。ほぼ同じ筋を通ってきて、何かエサなどがあると少しは道をはずして道草していく。 かといって、エサがあるからといっていつまでも執拗にそこにとどまることはしない。 その辺が気まぐれきわまりないところなのだ。 ある程度喰うと、スーッといなくなり、またしばらくして必ず同じ場所を偵察に来る。 つまり言い換えれば、通り道さえ知れば、必ずそこに回遊してくるクロダイを迎撃できることになるのだ。ボクはこれらの水中で得た実体験をもとに、ボクのクロダイ釣りは変わった。 もちろん、クロダイがいつもノー天気で荒喰いするわけでもないから、絶対にボウズをくらわないといったら嘘になる。だが、クロダイ狙いで釣行しても、ボウズの確率はきわめて少なくなった。あまり考えすぎず、気楽に狙う。必ず回ってくるはずなのだから、そのルートがどこなのかを探り、回遊してきたときを絶対に逃さない。釣れないときは何でも試してみる。気まぐれな相手には気まぐれに対応する。 これがクロダイをゲットする秘訣であることを悟ったのだ。 |
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